
スーパーやコンビニ、雑貨店などでお酒を販売するには「免許」が必要です。
この記事では、栃木県でお酒の販売を始めたい方に向けて、「一般酒類小売業免許」を取得するための主な要件を中心に、販売管理者の設置や登録免許税などの関連するポイントについても簡単に解説していきます。
目次
お酒の販売に必要な免許
酒類を販売する場合、販売先に応じて「小売業免許」と「卸売業免許」の取得が必要になります。
「酒類卸売業免許」: 他の酒類販売業者に販売できる免許
酒類小売業免許は、「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」「特殊酒類小売業免許」の3つに分類されます。今回解説する、消費者や飲食店、お菓子などの製造業者(酒類を原料として使う場合)に対して、原則すべての品目の酒類を継続して販売できる免許が、「一般酒類小売業免許」です。

一般酒類小売業免許を取得するための4つの要件
一般酒類小売業免許を受けるには、申請者やその法定代理人、申請法人の役員、申請販売場の支配人、そして申請販売場自体が免許要件を満たす必要があります。
要件は「人」「場所」「経営基礎」「需給調整」の4つに分類されます。ここでは、それぞれの要件についてご紹介します。
1.人に関する要件
免許を申請する方や役員、販売場の支配人などが、法律で定められた要件を満たしているかどうかを確認されます。
まず、過去の免許取り消しの状況を確認しましょう。
- 過去に酒類等の免許や許可を取り消された場合、取消の日から3年経過していること
- 法人の役員であった者は、取消の日から3年経過していること
次に、税金に関する要件を確認します。税金の滞納や法令違反がある場合、免許取得に影響します。
- 免許の申請前2年以内に国税や地方税の滞納処分を受けていないこと
- 国税・地方税に関する法令違反で罰金刑や通告処分を受けた場合、刑の執行を終えた日から3年経過していること
最後に、法令違反に関する要件です。過去の法令違反がある場合も、免許取得の制限がありますのでご注意ください。
- 未成年者飲酒禁止法、風営法(酒類提供部分に限る)、暴力団員不当行為防止法、刑法(傷害、暴行、凶器準備集合、脅迫、背任等)、暴力行為等処罰法により、罰金刑に処せられてから3年を経過していること
- 禁錮以上の刑の執行を終えた日、または執行を受ける必要がなくなった日から3年経過していること
2.場所に関する要件
販売場を設ける場所については、法律上いくつかの要件があります。正当な理由なく「取締り上ふさわしくない」と判断される場所では免許が認められません。
申請する販売場は、他の施設や事業ときちんと区分されている必要がありますので、基本的なポイントを見ていきましょう。
- 申請する販売場は、酒類の製造場や既に免許を受けた他の販売場、酒場・旅館・料理店などと同じ場所ではないこと
- 申請する販売場での営業が、他の事業と明確に区分されていること
(区画の独立性、専属の販売従事者がいること、代金の決済方法が独立していること など)
※例えば、狭い店舗の一角を借りて陳列棚を置くようなケースでは、「明確に区分されている」とは見なされません。
原則として、酒場や料理店などでは酒類販売の免許を取ることはできません。ただし、一定の条件を満たしていれば、例外的に認められる場合もあります。
また、販売場が自己所有の物件でない場合には、所有者などからの「使用承諾書」の提出が必要になりますので、事前に確認しておくことが必要です。
3.経営の基礎に関する要件
安定した経営を行えるかどうか、財務面や事業の継続性などがチェックされます。
財務や税務の状況は、免許取得の可否に直結します。次の点を確認しましょう。
- 国税または地方税を滞納していないこと
- 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けていないこと
- 最終事業年度の決算で、繰越損失が資本等の額※を上回っていないこと
-
※資本等の額=「①資本金」+「②資本剰余金」+「③利益剰余金」-「④繰越利益剰余金」
- 直近3事業年度連続で、当期純損失が資本等の額の20%を超えていないこと

法令順守の状況は免許取得の重要な条件です。以下を確認してください。
- 酒税関連の法律違反で通告処分を受け、履行していない、または告発されていないこと
- 販売場の設置が、建築基準法・都市計画法・農地法・地方条例などに違反せず、除却や移転命令を受けていないこと
申請販売場での適正な販売管理体制や、申請者・支配人の知識・能力が求められます。次の点を確認してください。
- 申請販売場で酒類の適正な販売管理体制を構築できること
- 申請者(法人の場合はその役員)や申請販売場の支配人が、酒類販売の適正な経営に必要な十分な知識・能力を持っていること
【十分な知識・能力を持つことの目安】
- 免許を受けた酒類製造業者・販売業者(薬用酒のみ除く)で3年以上の実務経験がある者
- 調味食品(醤油・味噌など)の販売業を3年以上経営した者
- 上記1及び2の経験を合計して3年以上ある者。
※1~3の経験がない場合は「他業種での経営経験」+「酒類販売管理研修」の受講などで総合的に判断される - 酒類業団体の役職員や酒類製造・販売業の経営者として相当期間従事した経験がある者
免許取得後も継続して酒類を販売するために、次のいずれかに該当するかをご確認ください。
- 酒類を継続販売するための資金や設備が整っていること
- 必要な資金を確保しており、免許取得までに設備を整えることが確実であること
4.需給調整に関する要件
酒類の需給バランスを守るため、以下の条件に該当しないことが必要です。
酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持できないと判断される場合は免許が認められないことがあります。次の点を確認してください。
- 販売先が構成員のみに特定される法人・団体でないこと
- 酒場、旅館、料理店など酒類を扱う接客業者でないこと
※例えば、飲食店が酒類小売業を兼業する場合は、飲食店で提供する酒類と酒販店で販売する酒類が混ざらないように、販売場、陳列棚、在庫置き場、帳簿などをしっかり区別して管理することで免許を取得できる場合があります。この場合は、事前に税務署の担当者へ相談することが必須です。
以上の4つの要件を満たしていない場合は、免許を取ることはできません。
そして、酒類の販売が適正に行われるように、販売場ごとに「酒類販売管理者」を選任する決まりもありますので、簡単にご紹介いたします。
酒類販売管理者の選任義務
酒類小売業者は、販売場ごとに1人以上の「酒類販売管理者」を、販売業務を開始する前までに選任して所轄税務署長に届け出る必要があります。選任しない場合や管理が適正でない場合は、50万円以下の罰金に処されることがあります。
酒類販売管理者の役割
酒類販売管理者は、従業員が法律を守り、安全に酒類を販売できるよう助言や指導を行う役割を担っています。
また、管理者は前回の受講から3年以内に「酒類販売管理研修」を受講することが義務付けられています。
酒類販売管理者に選任できる者
酒類販売管理者には、酒類の販売業務に従事し、過去3年以内に酒類販売管理研修を受講し、以下のA〜Cのすべての要件を満たす者を選任します。
酒類販売管理者に選任できる者の要件
-
次のイ~ハに該当しない者
- 未成年者
- 認知・判断・意思疎通を適切に行うことができない者
- 酒税法第10条第1・2・7・8号に該当する者(例:免許取消歴、税滞納、法令違反による禁錮・罰金刑など)
- 酒類小売業者に引き続き6か月以上継続雇用が見込まれること(親族や雇用期間の定めのない者も含む)
- 他の販売場で酒類販売管理者に選任されていないこと
※ 小売業者本人(または法人の役員)が販売に従事する場合は、自ら管理者になることも可能です。
酒類販売管理研修の実施団体等については、国税庁のホームページで確認いただけます。
通信販売酒類小売業免許との違い
「通信販売酒類小売業免許」は、インターネットやカタログなどを利用して、2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象に酒類を販売する場合に必要な免許です。
一方、「一般酒類小売業免許」は店頭販売が基本ですが、次のような方法であればインターネットやカタログ等を利用した販売が可能です。
・店頭でカタログの注文を受ける
・インターネットで決済した酒類を店頭で引き渡す
・免許の範囲内(同一都道府県など)の消費者に限定して通信販売を行う
※注意:通信販売酒類小売業免許のみをお持ちの場合は、これらの方法で販売することはできません。
一般酒類小売業免許との大きな違いは、需給調整要件のため販売できるお酒に制限がある点です。輸入酒類であれば制限はありませんが、国産酒類を扱う場合は、前会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が全て3,000キロリットル未満である酒類製造者が製造、販売する酒類に限られます。要するに、国内大手メーカーが製造するお酒については販売することはできません。
無免許営業の罰則
販売業免許を受けずに酒類を販売すると、酒税法の規定により、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることがあります。また、申請時に虚偽の記載や不正な行為があった場合など、一定の条件に該当すると、販売業免許が取り消されることもあります。
登録免許税の納付
免許を受けるには、登録免許税の納付が必要です。
税務署から「酒類販売業免許に伴う登録免許税の納付通知書」が送付されますので、税務署又は金融機関などで3万円(免許1件あたり)を納付します。
納付後は、登録免許税の領収証書を「登録免許税の領収証書提出書」に貼付し、指定された期日までに税務署に提出する必要があります。
すでに酒類小売業免許をお持ちの方が、同じ場所で別の酒類小売業免許を申請する場合は、「条件の緩和手続き」となり、登録免許税の納付は不要です。
例:一般酒類小売業免許を取得している事業者が、同一店舗で「通信販売酒類小売業免許」を取得する場合。
酒類販売業免許の取得は、はじめての方にとって複雑に感じるかもしれません。まずは免許取得の第一歩として、今回解説した、免許要件や販売管理者の設置、登録免許税の納付など、基本的なポイントを押さえておくと安心です。











