【徹底解説】栃木県の産業廃棄物収集運搬業許可

産業廃棄物の運搬は許可を取得している事業者しかできないと思っている方が多いのですが、必ずしもそうではありません。許可が必要になるのは「委託されて産業廃棄物を運搬する場合」です。

例えば、建設業を営んでいて、自身が元請けとして入っている現場で発生した廃棄物を運搬する場合には、委託されてはいませんので許可は必要ありません。

逆に、同じ工事現場でも、下請業者として入っていて、元請業者から委託されて産業廃棄物を運搬する場合は許可が必要になります。

産業廃棄物収集運搬業の許可

産業廃棄物収集運搬業の許可ですが、どの県の許可を取ればよいのかで迷われる方も多いようです。
産業廃棄物を積み込む県と降ろす県が同じなら、その県の許可を取ればいいのですが、処理施設が他県にしかない場合は複数の県をまたいで運搬することもあります。

例えば、「栃木県」を出発して「茨城県」を通過して「千葉県」で降ろすような場合です。この場合、3つの県が関係するので、3県全ての許可が必要になるのでしょうか。

運搬地図県をまたぐ

答えは、途中通過するだけの県の許可は必用ありません。産業廃棄物収集運搬業の許可は、産業廃棄物を「積み込む県」と「降ろす県」の許可を取れば良いことになっています。

今回の例ですと、「栃木県」と「千葉県」の許可が必要です。もちろん、千葉県から栃木県に運ぶ場合も同じです。

運搬地図_栃木県と千葉県

許可が不要な自社運搬の際の注意点

排出事業者自らが産業廃棄物を運搬する場合、許可は必用ありませんが、次の点を守らなければなりません。

  • 産業廃棄物の飛散、流出や悪臭、騒音、振動等によって周辺の住民に迷惑をかけないこと
  • 運搬車、運搬容器等は産業廃棄物が飛散、流出、悪臭が漏れるおそれのないものを使用すること
  • 運搬車は、車体の両側面に産業廃棄物収集運搬車であることを表示し、定められた書面を備え付けること

表示と書面の詳細

産業廃棄物の種類と具体例

どういったものが「産業廃棄物」に当たるのかを確認しましょう。

産業廃棄物は、事業活動に伴って発生した廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物に限定されていて、それ以外の廃棄物は「一般廃棄物」として扱われます。

主な産業廃棄物の種類(特別管理産業廃棄物を除く)

産業廃棄物の種類

具体例

すべての業種に共通

1

燃え殻

焼却残灰、石炭がら、灰かす、炉清掃物等

2

汚泥

製造業の生産工程、廃水処理等で排出された泥状物、建設汚泥、下水道汚泥、浄水場汚泥等

3

廃油

潤滑油、洗浄油、絶縁油、切削油、タールピッチ類等

4

廃酸

廃硫酸、廃硝酸、廃塩酸等のすべての酸性廃液

(pH2以下でないもの)

5

廃アルカリ

廃ソーダ液、金属石鹸液等のすべてのアルカリ性廃液

(pH12.5以上でないもの)

6

廃プラスチック類

廃タイヤ、合成ゴムくず、合成樹脂くず、合成繊維くず等、固形状および液状のすべての合成高分子系化合物

7

ゴムくず

天然ゴムくず

8

金属くず

研磨くず、切削くず、空き缶、金属スクラップ等

9

ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず

ガラスくず:ガラス類、廃空き瓶類、板ガラスくず等

コンクリートくず:製造過程で生じるコンクリートブロック及びアスファルト・コンクリートくず等

陶磁器くず:陶器くず等

10

鉱さい

電気炉等の鉱さい、高炉、平炉、転炉等の残さい、キューポラのノロ、不良鉱石、不良石炭等

11

がれき類

工作物の新築・改築等で発生したコンクリート破片、レンガの破片等

12

ばいじん

ばい煙発生施設等において発生するばいじんで、集じん施設によって集められたもの等

特定の業種によるもの

13

紙くず

建設業(工作物の新築、改築または除去に伴って生じたものに限る)

壁紙、障子、板紙等

※合成紙は廃プラスチック類です。

パルプ・紙・紙加工の製造業、出版業、製本業、印刷物加工業

印刷を失敗した紙、裁断くず

14

木くず

建設業(工作物の新築、改築または除去に伴って生じたものに限る)

柱など

木材・木製品の製造業、パルプ製造業、輸入木材の卸売業、物品賃貸業

おがくず、木切れ、チップくずなど

15

繊維くず

建設業(工作物の新築、改築または除去に伴って生じたものに限る)

畳・じゅうたん、カーテンなど

繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く)

綿くず、木綿くず、糸くずなど

※合成繊維くずは、廃プラスチック類です。

16

動植物性残さ

食料品製造業、飲料・飼料製造業、医薬品製造業、香料製造業

原料として使用した動物又は植物の固形状の不要物。魚の骨、大豆かす等

※飲食店等から排出される動植物性残さは一般廃棄物に該当します。

17

動物系固形不要物

と畜業、食鳥処理業

とさつ又は解体した獣畜及び食鳥処理した食鳥の固形状の不要物

18

動物のふん尿

畜産農業

畜産農業から発生する動物のふん尿

19

動物の死体

畜産農業

畜産農業から発生する動物の死体

 

20

1-19の産業廃棄物を処分するために処理したもので、1-19に該当しないもの

コンクリートの固型化物、灰の溶融固化物など

20種類の産業廃棄物の種類がありますが、13~19の産業廃棄物は特定の業種以外で発生した場合は、「一般廃棄物」の扱いになります。

例えば、一般的なオフィスで使用したメモ用紙を廃棄処分する場合を考えてみます。
メモ用紙は、上の表では「13.紙くず」に該当しますので、特定業種の「建設業、パルプ製造業、出版業など」から発生した場合に、産業廃棄物になります。
ですから、一般的なオフィスで発生したメモ用紙は、特定業種には該当しませんので、「一般廃棄物」になります。

申請の際には、どの産業廃棄物を収集運搬するかを漏れの無いように注意してください。

建設業系の産業廃棄物を扱う場合に持っておくと良い種類

解体工事などの建設現場から排出される廃棄物を収集運搬する場合は、以下の品目を申請することをおすすめします。

  • 廃プラスチック類
  • 紙くず
  • 木くず
  • 繊維くず
  • ゴムくず
  • 金属くず
  • ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
  • がれき類

土木系の工事が絡む場合は、以下の種類も必要になることがあります。

  • 汚泥
  • 廃油
  • 廃酸(pH2以下でないもの)
  • 廃アルカリ(pH12.5以上でないもの)

許可を申請する際に、とりあえず全ての種類を申請してしまおうと思うかも知れませんが、事業計画書、運搬車両、運搬容器の申請が必要になりますので、扱う予定のない種類を申請することはおすすめできません。

産業廃棄物収集運搬業の許可の要件

  • 欠格要件に該当しない
  • 経理的な基準
  • 施設の基準
  • 申請者の能力基準

欠格要件に該当しない

個人事業主の場合は申請者本人、法人の場合は役員、株主等が欠格要件に該当してしまうと許可は取得できませんので申請の前にまずチェックする項目です。

欠格要件
・精神の機能の障害によりその業務を適正に行うことができない
・破産者で復権を得ていない
・禁錮以上の刑に処されてから5年が経過していない
・暴力団員でなくなってから5年が経過していない
・暴力団関係者が事業活動に関わっている
・業務に関して不誠実な行為をする恐れがある
・廃棄物処理法や浄化槽法や刑法といった特定の法律に違反し罰金の刑に処されてから5年が経過していない
・過去に許可を取り消され、その日から5年を経過していない

経理的な基準

経営状態が悪くて、収集してきた産廃の処理費用をカットするために不法投棄をしてしまったり、突然の倒産で産廃が放置されてしまった・・・といったことがあってはいけませんので、許可申請の際に、経理的な基準を設けてチェックしています。

経理的な基準
・債務超過でないこと(貸借対照表の負債が資産を上回る状態のこと)
・当期純利益がマイナスでないこと(法人税などの税金を差し引いた後の利益)
・法人税の滞納がないこと

これらの条件を満たしていない場合は、中小企業診断士や公認会計士等が作成する経営改善の診断書や今後5年間の収支計画書等を提出する必要がありますので管轄の行政庁に相談してください。

施設の基準

駐車場
・運搬する車両や使用する容器等を駐車、保管が十分にできる敷地であること
・申請者の所有権や継続的に使用できるかを、不動産登記事項証明書、賃貸借契約書等で確認できること
運搬施設・運搬容器
・飛散防止や悪臭防止など、産業廃棄物の適正にあった運搬容器や運搬車両を使用すること
・運搬車両は、自動車検査証の交付を受けていること
・運搬車両が、申請者の所有権や継続的に使用できるかを、賃貸借契約書等で確認できること
・他の処理業者が使用する運搬車両でないこと

申請者の能力基準

  • 日本産業廃棄物処理振興センターが行う講習会に参加して「修了証」を取得すること

産業廃棄物を扱うのに、誰でも許可が取れてしまうようでは困りますので、申請者に一定の知識と技能があることを「修了証」で証明します。

講習会は、法人なら法人の役員、個人なら申請者本人が2日間受講して、最終日の試験に合格する必要があります。

「修了証」の有効期間は、新規の場合は5年間ありますので、許可の取得を検討しているようでしたら、早めに講習会に参加しておくと申請がスムーズに行えます。

許可の取得において、初めに確認することは、欠格要件に該当しないかどうかです。そして、経理的な基準もクリアでき、運搬車両や容器などの施設の目処が付いたら講習会へ参加し「修了証」を取得してください。

修了証を既に持っている場合は、期限が切れていないかを確認してください。

産業廃棄物収集運搬業の許可の申請先

主たる事務所が栃木県内にある場合は、所在地を管轄する環境森林事務所または環境管理事務所に、それ以外の場合は、廃棄物対策課に提出します。
申請書を持参する場合は、事前に電話予約が必要です。また、2020年6月19日からは郵送による提出も可能になりました。

県西環境森林事務所環境部環境対策課

所在地 日光市瀬川51-9
電話番号 0288-23-1000
所管区域 鹿沼市、日光市

東武鬼怒川線(下今市駅より徒歩20分)

県東環境森林事務所環境部環境対策課

所在地 真岡市荒町116-1
電話番号 0285-81-9002
所管区域 真岡市、上三川町、益子町、茂木町、市貝町、芳賀町

県北環境森林事務所環境部環境対策課

所在地 大田原市中央1-9-9
電話番号 0287-22-2277
所管区域 大田原市、矢板市、那須塩原市、さくら市、那須烏山市、塩谷町、高根沢町、那須町、那珂川町

JR西那須野駅から関東バス小川行き・馬頭行き・黒羽行き・国際医療福祉大学行き・大田原営業所行きにてトコトコ大田原前バス停下車(徒歩3分)
大田原営業所行きは、「那須庁舎前」バス停で下車すると便利です。(徒歩2分)

県南環境森林事務所環境部環境対策課

所在地 佐野市堀米町607
電話番号 0283-23-4445
所管区域 足利市、佐野市

東武佐野線(堀米駅より徒歩5分)
JR両毛線(佐野駅より徒歩25分)

小山環境管理事務所環境対策課

所在地 小山市犬塚3-1-1
電話番号 0285-22-4309
所管区域 栃木市、小山市、下野市、壬生町、野木町

資源循環推進課 審査指導班

所在地 宇都宮市塙田1-1-20
電話番号 028-623-3154
所管区域 宇都宮市、栃木県外

JR宇都宮駅西口バスターミナル38番発(宇都宮市内循環)は「栃木県庁舎前」で下車

栃木県の産廃収集運搬許可(積替保管無)の新規申請に必要な書類

申請書及び添付書類

書類の概要

法人

個人

産業廃棄物収集運搬業(新規・更新) 様式第6号

事業所、申請者名、役員等の記入

会社定款

原本証明は不要

×

登記事項証明書

履歴事項全部証明書

×

住民票抄本(本籍地記載)

①~③の全員分が必要

①        役員(監査役、相談役、顧問等)

②        発行済株式総数100分の5以上の株主または出資者

③        政令で定める使用人

成年被後見人等に係る登記事項証明書

出資している法人の登記事項証明書

法人が株主または出資者として100分の5以上出資している場合

×

宇都宮市の許可証がある場合はその許可証の写し

 

様式第6号の2(第1面)

1.事業の全体計画

2.取り扱う産業廃棄物の種類と運搬量等

└ 添付書類

既に取得している処理業の許可があれば、当該事業計画に関係する許可証の写し

様式第6号の2(第2面)

3.運搬施設の概要

(1)運搬車両の一覧

(2)その他の運搬施設の概要

└ 添付書類

①駐車場の付近の見取図

②駐車場を所有する場合は、土地の不動産登記事項証明書

③駐車場が賃貸の場合は、土地の賃貸借契約書の写し又は使用貸借契約書の写し

④自動車検査証の写し

⑤自動車を借りている場合は、④に加え賃貸借契約書の写し又は使用貸借契約書の写し

様式第6号の2(第4面)

4.収集運搬業の具体的な計画

様式第6号の2(第5面)

5.環境保全措置の概要

様式第6号の2(第6面)

運搬車両の写真

様式第6号の2(第7面)

収納容器等の写真

様式第6号の2(第8面)

事業の開始に要する資金の総額、調達方法

様式第6号の2(第9面)

資産に関する調書(個人用)

×

様式第6号の2(第10面)

誓約書 申請者及びその役員等

【経理状況確認書類】

①直前3年の各事業年度の「貸借対照表」、「損益計算書」、「株主資本等変動計算書」、「個別注記表」及び「法人税の納税証明書(その1・納税額等証明用)」

②新設法人等で3年間の決算実績がない場合、申請時点までに決算実績のある「貸借対照表」、「損益計算書」、「株主資本等変動計算書」、「個別注記表」及び「法人税の納税証明書(その1・納税額等証明用)」に加えて【収支計画様式】今後5年間の収支計画

③直前の事業年度が債務超過で当期純利益もマイナスの場合は、管轄の行政庁に相談してください。

×

①銀行預金等の残高証明書

②固定資産の評価証明書

③直前3年の所得税の納税証明書(その1・納税額等証明用)
全部又は一部を提出できない場合、当該証明書が提出できない期間について、「納税証明書(その3・未納税額のない証明用)」及び「源泉徴収票の写し」を提出する。)

×

【事業を行うに足りる技術的能力を説明する書類】

(公財)日本産業廃棄物処理振興センターの行う講習会の修了証の写し

産業廃棄物収集運搬業の許可を取得する場合の流れ

産業廃棄物収集運搬業の許可と法人成り

産業廃棄物収集運搬業の許可を個人事業者として取得した後に法人化する場合、許可は法人に引き継ぐことはできませんので、法人として新規で許可申請を行う必要があります。

もし、法人化を検討しているようでしたら、先に法人化してから産業廃棄物収集運搬業の許可を取ることを検討してはいかがでしょうか。

法人化で取得した許可は法人に対してのものですので、代表者が代わったとしても変更届を出すだけで済みます。

その他のメリットとしては、所有している車両や備品等の資産も法人の所有になりますので、事業承継があった場合も相続等の手続きをすることなく、スムーズに承継することができますよ。

法人化する場合は、以下の項目のチェックも忘れないようにしてください。

  • 役員、株主等が欠格要件に該当していないこと
  • 修了証が有効期間内のものであること
    「新規申請の修了証」は申請日前5年以内のもの
    「更新申請の修了証」は申請日前2年以内のもの
  • 個人の許可で使用していた車両等は廃止の変更届を提出しておく

産業廃棄物収集運搬業の許可について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?思った以上にやることが多いと感じたのではないでしょうか。

産業廃棄物収集運搬業の許可を行政書士に依頼する場合

書類の一部には、どうしてもお客様にご用意いただかなければならないものもありますが、「○○の書類を用意してください。」というように行政書士から依頼された書類をご用意いただきますので、お客様自身が手引を読んで許可の要件を調べる必要はありません。

ご自身で申請する場合、申請書の記載に不備があったり、写真の撮り方や見取図の作成が要件を満たしておらず、再提出になることがあります。
その点、行政書士が対応することで許可の取得までスムーズに進めることができます。

  • 許可要件に該当するかの確認
  • 必要書類の収集、行政庁との打ち合わせ、申請書類の作成等
  • 申請書類の提出
  • 許可の取得

許可の取得でお困りでしたら行政書士たどころ事務所へご相談ください。まずはお電話かメールフォームをご利用ください。

許可申請に関するご相談はお電話・メールにて承っております。また、直接のご相談や出張相談をご希望の方も、フォームからご予約が可能です。

  • お問い合わせは24時間承っておりますが、返信に2営業日ほど頂く場合がございます。「近日中に許可が必要になった」などお急ぎの方は、可能ならお電話にてお問合せください。

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