建設業許可の工事経歴書の書き方

建設業許可で提出する「工事経歴書」は、経営事項審査を受ける場合とそうでない場合で記載方法が異なりますので、どのように記載したらよいかお困りの方も多いと思います。
今回は、栃木県の手引きのサンプルを用いながらそれぞれのルールを解説していきます。

なお、工事経歴書は誰でも閲覧することができますので、工事の規模や工法や技術などが分かるように記載しておくことで、自社の強みをアピールする材料にもなりますよ。

工事経歴書の記入方法は2通り

工事経歴書は、公共工事を受注する、しないで記載のルールが異なります。
公共工事を受注する事業者は、「経営事項審査」を受けなければなりません。これは建設業者の成績表のようなもので、事業者ごとに点数が付けられます。そのため、審査の公平を期すために経営事項審査を受ける事業者用のルールに従って工事経歴書を作成することが義務付けられています。逆に、経営事項審査を受けない事業者は、緩和されたルールで記載することができます。

経営事項審査を申請しない場合

経営事項審査を申請しない場合は、税込でも税抜でもどちらでもかまいませんので、自社の決算書に合わせて選択してください。次のルールに基づいて工事経歴書を作成します。

ルール 内 容
業種ごとの全ての完成工事高の5割を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載します。
※500万円(建築一式は1,500万円)未満の軽微な工事は、5割を超えなくても10件記載したら終了します。
1に続けて、着手はしたけど期末までに完成できなかった未成工事について請負代金の額の大きい順に記載します。「未成工事」と見出しをつけて記載します。
※金額を記載しますが、小計・合計には含みません。

「栃木県の手引」を例に確認していきましょう。

「ルール1」

  • 合計の5割の額を求める
    「とび・土工・コンクリート工事」の請負代金の額の合計が200,000千円です。
    経営事項審査は受けませんので、5割の額を求めておきます。
合計の5割(200,000千円の5割)100,000千円
  • 請負代金の額の大きい順に記載していき、先程求めた完成工事高の5割である「100,000千円」を超える「100,800千円」になったところで記載を終えます。

「ルール2」

  • 未成工事を記載します。

経営事項審査を申請する場合

経営事項審査を申請する場合は、基本的に「税抜」で作成します。※免税事業者は「税込」で作成します。
先述の経営事項審査を申請しない場合よりも記載のルールが細かくなっていますので注意が必要です。

ルール 内 容
元請工事に係る完成工事について、その請負代金の額の合計額の7割を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載します。<記入例1>
※500万円(建築一式は1500万円)未満の軽微な工事が10件に達した場合は、その時点で7割を超えていなくても記載は終了します。<記入例2>
1に続けて1で記載した以外の元請工事及び下請工事に係る完成工事について、業種ごとの全ての完成工事高の7割を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載します。
※500万円(建築一式は1500万円)未満の軽微な工事については、1で記載した軽微な工事の件数と合わせて10件まで記載します。
3 2に続けて、主な未成工事について記載します。その際、「未成工事」と見出しを付けます。

「ルール1」

  • 元請の合計の7割と全体の合計の7割の額を求める
    「とび・土工・コンクリート工事」の元請の合計額が120,000千円、下請も含めた合計の額が240,000千円です。
    経営事項審査を受けますので、それぞれの7割の額を求めておきます。
元請の合計の7割(120,000千円の7割)84,000千円
合計の7割(240,000千円の7割)168,000千円
  • 元請工事の完成工事について、その請負代金の額の合計額の7割である「84,000千円」を超えることろまで、請負代金の額の大きい順に記載します。今回は、青囲みの2件(合計95,000千円)で超えますので、元請工事については記載を終了します。

「ルール2」

  • ルール1で記載した以外の元請工事及び下請工事に係る完成工事について、業種ごとの全ての完成工事高の7割である「168,000千円」を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載し、合計が「175,000千円」になったところで記載を終えます。

「ルール3」

  • 未成工事を記載します。

次は、 元請工事の額が500万円未満の「軽微な工事」が多い場合の記載例です。

上記の例では、「管工事」の元請の合計額は51,400千円です。
経営事項審査を受けますので、7割の額を求めます。

「ルール1」

  • 元請の合計の7割と全体の合計の7割の額を求める
    「管工事」の元請の合計額は51,400千円です。
    経営事項審査を受けますので、7割の額を求めます。
元請の合計の7割(51,400千円の7割)35,980千円
  • 元請工事の完成工事について、その請負代金の額の合計額の7割である「35,980千円」を超えることろまで、請負代金の額の大きい順に記載します。
    今回は、始めの2件については、500万円以上の工事を記載していますが、残りの元請工事は全て500万円未満の軽微な工事のため、合計額の7割を超えていませんが、10件に達したところで記載を終えます。

なお、今回はルール1だけで軽微な工事が10件に達成しており、未成工事もありませんので記載は終了します。

工事経歴書を作成する際の注意点

図の「1~12」を記載する際の注意点については次のとおりです。
※経営事項審査を申請するしないに関係ありません。

注意点
  1. 許可を受けようとする(受けている)建設工事の種類ごとに記載します。用紙が2枚以上に及ぶ場合は、2枚目以降に続けて記載します。(事業年度終了時の決算変更届の場合、届出時点で許可を取得している全業種分を実績のあるなしにかかわらず作成します)
  2. 税込・税抜の該当する方に丸を付けます。
  3. 「注文者」及び「工事名」は、その内容により個人の氏名が特定されることのないようにします。 例えば、注文者「A」、工事名「A邸新築工事」等と記載します。
  4. 元請とは建設工事の最初の注文者(発注者)から請け負ったもの、下請とは他の建設業者等から請け負ったもののことをいいます。
  5. 共同企業体(JV)として行った工事には「JV」と記載します。
    ※ その際の請負代金の額は、共同企業体全体の請負代金の額に出資の割合を乗じた額又は分担した工事額を記載してください。
  6.  契約書等から工事の内容がわかるよう具体的に記載します。
  7. 工事場所の都道府県及び市区町村名を記載します。
  8. 建設業法第 26 条の規定に基づき各工事現場に配置した配置技術者について、該当する箇所にレ印を記載します。
    ※ 一般建設業者の場合は、すべて「主任技術者」にレ印を付してください。
  9.  請負代金の額を千円単位で記載(千円未満は切り捨て)します。変更契約があった場合は、変更後の金額を記載します。
    ※ 工事進行基準を採用している場合には、当該工事進行基準が適用される完成工事について、その完成工事高をカッコ書きで付記します。
  10. 「うち( )」の欄には、下記の業種について該当する金額を記載します。
    ・土木一式については「プレストレスト・コンクリート(PC)」
    ・とび・土工については「法面処理」
    ・鋼構造物については「鋼橋上部」
  11. ページごとに記載した完成工事の件数及び請負代金の額の合計、及び元請工事の請負代金の合計額を記載します。
  12. 業種ごとの完成工事の件数の合計及び請負代金の額の合計を記載します。 ※複数のページがある場合は、最終ページに記載します。

工事経歴書を作成するための準備

工事経歴書を作成するためには、最低限次の情報が必要になりますので準備しておきましょう。

工事経歴書に必要な情報
  • 工事の業種
  • 元請 or 下請
  • 工事の注文者
  • 工事の内容
  • 工事の現場の所在地
  • 担当した主任技術者(監理技術者)
  • 請負代金の額
  • 工期

これらの情報をシステムから簡単に抽出できるのであれば良いのですが、そうでなければ、請負契約書や請求書などから拾うことになります。工事件数が多い事業者様ですとかなり大変な作業になります。
提出期限ギリギリになって慌てることのないように、日頃から必用な情報をまとめておくことで効率よく工事経歴書を作成できるようになります。

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